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  • 執筆者の写真Kobayashi Kei

経過表を考える

経過表、それは最も悩ましく面倒なスライドデザインのひとつです。描くのが大変、レイアウトがしづらい、情報が絶対に多くなる、苦労の割に内容は伝わらない、それでいて無くすこともできない…。どうすれば見る価値のある経過表を作ることができるか、いろいろな角度から考えてみましょう。


BEFORE

心筋梗塞後のリハビリテーションの入院経過について示したスライドです。情報量が多く、全体的に視線が定まらず、メッセージもわかりづらい印象です。


直したい!

  1. 経過表が見づらく、情報がわかりにくい

  2. 経過表の周囲に説明が散在している


AFTER






直した!

  1. 入院経過の解説と経過表を別々のスライドにした

  2. 理学療法とバイタルの情報を分け、バイタルをシンプルなグラフで可視化した

  3. 時間軸を2分割し、1日分のスペースを多くとった


アニメーションをさせるとこんな感じです。


解説

1. 情報をカテゴライズする


BEFOREのスライドには多くの情報が詰め込まれていますが、大きくカテゴリ分けすると


1. パスの実施基準についての説明

2. 理学療法に関する情報

3. バイタルサインに関する情報


にわけることができます。こうした情報が上下あちこちにちりばめられているので、見る側は視線が定まらずどこからどう読めばいいのかがわからなくなります。なのでカテゴライズされた各情報がまとまった形で視界に入るようにしましょう。


まずパスの実施基準について説明します。


続いて経過表です。理学療法の内容を示します。



そしてバイタルを示します。バイタルがおそらく今回強調したい情報なので、簡易のバーで表示することで視覚的に印象が付きやすいようにしました。



さらに5/27日のバイタルが強調したい情報なので、枠で囲って強調します。



これでそれぞれの情報を順に表示することができました。ちなみに血圧のバーはスライドに1列の表を挿入して簡易のスケールを作り、それに合わせて線を引いて作成しています。


2.時間を分割する


私は基本的に情報を分割して個別のスライドにわけるのが好きなのですが、今回は時系列の横軸を2分割することで1日ごとの情報をゆったりと描けるデザインにしてみました。


ただこうした分け方にはメリット、デメリットがあり、発表の場によっては不評かもしれません。メリットとしては

・1日ごとの情報がすっきりと視界に入るようになる

・余白が増えることで図やアイコンを挿入することができる


などが挙げられ、逆にデメリットとしては

・経過における状態の比較がしにくくなる

・前のスライドを記憶しておく必要がある

・経過表をわけている前例が乏しい


などがあります。


どちらも一長一短という気がしますが、今回の経過では時間の前後関係にあまり重要性がなく、見た目を優先して分けるデザインを採用しました。口頭でどう説明するかも大事なポイントですね。



3.見る価値のある経過表?


ビジュアルデザインの観点から経過表を直してみましたが、今回のデザインに対する大きな不満として「全然おもしろくなっていない」という問題を痛切に感じています。

これはBEFOREを作った方の責任では全くなく、そもそも経過表というスライド自体が特におもしろさを意識して作られないことが問題なのですが、もう少し魅力的にみせるための改善の余地はないのでしょうか?


一般的に経過表は症例報告のプレゼンで「こんな感じで経過しましたよ」という流れをザッと説明するためのツールですが、治療は常に人間同士のやり取りであり、その背景には様々なストーリーがあるはずです。


人はみな物語が大好きです。どんな情報でもストーリーを盛り込むことで、感性に訴えかけることができ、印象にも記憶にも残りやすくなります。

とはいえストーリーとひと言でいってもデザイン以上に奥の深い世界ではありますが、過剰に要素を盛り込んだりやたらと演劇的にする必要はありません。わざわざ報告する価値があると判断した症例ですから、そこには悩んだ時期、停滞した時期、悪化した時期、そして改善した時期など様々な時期があるはずです。こうした時期が展開したポイントをつかみ、強調してあげるだけでも話にメリハリができ、聴き手の興味を引く内容にすることができます。

大切なことは、データの羅列ではなく一連の物語としてプレゼンテーションを考えることです。

昨今のストリーミングを主とした学会発表などでは退席のハードルがとても低く、「見る価値なし」と判断されたらすぐに切られてしまいます。見てもらえないプレゼンは存在していないことと同義です。私もまだまだできていませんが、厳しい時代を生き残るプレゼンテーションを考えていきましょう。




※スライドはすべてmicrosoft Excell office 365およびmicrosoft Powerpoint office 365 Window10 を使用しています

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