これまで医療スライドデザイン部の活動や、書籍「医療者のスライドデザイン」を通じ「どうすればきれいで伝わるスライドがデザインできるか?」を追及してきました。
最近は次のステップとして「どうすれば『時間と手間をかけずに』きれいで伝わるスライドがデザインできるか?」について考えています。
まずは私自身の工夫について3回ほどの連載でご紹介いたします。コミュニティでも議論の種をまいていきますので、ぜひいっしょに考えていきましょう。
スライド作成に時間と手間をかけたくない!
これは医療者に限らず、日々多忙に働いているすべての人に共通の心の叫びかと思います。
かくいう私も仕事や家事で常に時間に追われており、早くAIが自然言語だけでスライドを作ってくれないかと心待ちにしています。
残念ながら自由にそれができるにはまだ時間がかかりそうなので、スライドデザインにある程度の時間と手間をかけることはやむを得ません。ではどうすれば簡単にスライドをデザインできるでしょうか?その条件として以下のものを考えました。
1. 作り方が決まっている
スライド一枚一枚に対してデザインを考えるのではなく、シンプルなルールに当てはめていくだけで作ることができたら簡単なはずです。
2. 情報量に対して融通が効く
スライドごとに入れる情報量が違うことが、レイアウトを難しくする一因です。スライドに入れる情報の量が増減しても影響が少ないレイアウトを定義できたら、作業は簡単になります。
3. 修正がしやすい
一発でスライドが完成することはほとんどなく、手直しが必ず生じます。このとき修正が簡単にできるデザインであることが大切です。
こうした条件を満たすにはどうすればいいか?実践していきましょう。
レイアウトのルール
スライド全体に一定のルールが決まっていれば作りやすく、一貫した美しいデザインになります。しかしルールを細かく設定するほど、情報量の増減に対して融通が利きづらくなるジレンマも発生します。
どこまで細かくルール化するかは好みの問題でもあるので、あくまで最近の私の作り方としてご紹介します。
まずは基本的なスライドとして2種類を用意します。タイトルのあるスライドと、白紙のスライドです。
タイトルあり
白紙
そして演題を載せる表紙のスライドと、話の区切りで使うチャプタータイトルのスライド。これだけで必要最低限のプレゼンテーションを作ることができます。
続いてレイアウト。スライドは基本的に図とテキストで構成されるので、テキストのみが1種類、テキストと図の組み合わせで2種類を基本形として用意します。
テキストのみ
テキストと画像
レイアウトの注意点として、スライドの端やタイトルのすぐ傍まで情報を書きこまず、マージン(隅の余白)を必ず確保するようにしましょう。厳密に何センチと設定しなくてもいいですが、情報が端まで詰めこまれていると乱れた印象になります。
文字のルール
文字サイズにあらかじめルールを決めておきましょう。タイトルの文字サイズを1種類、見出しの文字サイズを2種類、テキストの文字サイズをSML3種類設定します。基本的にテキストはMサイズのみで作ることをおすすめします。
文字サイズの例。最近はテキストサイズが固定されているツールも多いですね(Notionなど)
Lは文字のみのスライドに使用し、Sは引用などで小さく文字を書きたいときなど、シチュエーションを固定しておくと使い勝手がいいです。
「テキスト量が多いので、スライドによって文字を小さくしたい」という意見もあると思いますが、テキストが多くなるときはテキストの量を減らしましょう。定義した文字サイズでスライドに収まらない場合、テキストが多すぎる可能性が高いです。
色のルール
色はだいたい4色あればことたります。できるだけ最初に定義した色でまかなうようにし、グラフの描画など、必要に応じて色を足すようにしましょう。
配色の例。プレゼンテーションごとに定義は変えています
強調のルール
情報を強調する方法はいろいろありますが、できるだけ一定のルールで強調しましょう。たくさんの情報をやみくもに強調せず、スライドの中で本当に伝えたいことだけを強調してあげることも大切です。
強調の例。たくさん強調しすぎないようにしましょう
また、一文のなかで文字サイズを大きくしたり小さくしたりすると後の編集が面倒になるので、文字サイズは一定にしてボールドや色だけで調整した方が作業負担は減ります。
ルールは好みでカスタマイズを
以上、個人的な工夫を紹介しましたが、このルールが正解というわけではありません。
あくまでも自分にとって作りやすいことが大切ですので、試行錯誤をしながら楽に作れるルールを発見してみてください。
ルールが統一されたスライドは、作り手と観客両方の認知負荷を減らしてくれます!
次回は「余計な作業を減らす」方法について考えていきましょう。
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