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  • 執筆者の写真Kobayashi Kei

経過グラフを考える

この症例はこのような治療をし、このような経過で改善しました、という治療経過のグラフはどの科の症例報告でも頻出し、最も描き方の難しいスライドのひとつです。無理に一枚の絵に詰め込むのではなく、それぞれの情報をスライドで見せる方法を考えていきます。


BEFORE



重症妊娠悪阻から偽性甲状腺機能亢進症を発症し、血小板減少を生じた一例の治療経過です。甲状腺ホルモンの改善は前のスライドで示されており、PTUの開始、減量、尿ケトンの改善、血小板減少の改善、白血球、ヘモグロビンの推移を一枚のスライドに表示しています。


直したい!

  1. グラフの中の要素が多すぎるため、それぞれの情報が認識しにくい

  2. 左右に2本の軸があり、データの数値が把握しづらい


AFTER


動画にするとこのような感じです。



直した!

  1. グラフの要素を別々のスライドにわけた

  2. できるだけ情報を削り、検査値がアニメーションで表れるデザインにした


解説

1.情報を詰め込みすぎない


BEFOREのスライドの最もわかりやすい問題点は、ひとつのグラフにデータを詰め込みすぎていることです。このようなデザインをする心理として「同時に表示したほうが複数のデータを比較しやすい」という配慮が考えられますが、果たしてその気遣いは正しいのでしょうか?

大切なことは、観客に対して、どの情報とどの情報を比較させたいかを明確にすることです。やみくもに観客に考察を丸投げするのではなく、演者としてどのデータを比較してほしいのかを伝えることで、認知の負荷が減り、理解がしやすくなります。


まずは情報を整理していきましょう。今回のスライドでは


<時間の情報>

12週目まで入院。以降は外来通院


<治療の情報>

11週目ごろからPTU300mg開始、12週目ごろに150㎎に減量


<検査値の情報>

尿ケトン

血小板

白血球

ヘモグロビン


といった情報が含まれています。整理するほどに内容の部分で気になる点が出てきますが、いったん脇に置き、デザインの考察をしていきましょう。


今回は伝えたい情報を治療経過と各検査値の比較とし、色のついている血小板の情報を特に伝える形で作っていきます。


最初に時間の情報と治療内容を提示します。


続いて尿ケトンの情報を表示します。


尿ケトンの情報を消し、血小板数を表示します。


最後にあまり重要度の高くないヘモグロビンと白血球の情報を載せます。このとき血小板数を完全に消さず、グラフの色を薄くして文字情報をなくすことで、血小板数のおよその変化と他のデータを比較することができます。


デザインのポイントはいくつかありますが、一番大切なことは一度に視界に入る情報をできるだけ減らすことです。観客にとってスライドが目の前に提示されてから「こういうスライドか」と認識できる時間が短いほど良いスライドです。視覚の認知負荷が軽いほどメモリに余裕ができ、プレゼンテーションによる聴覚の情報も理解しやすくなります。


一枚に含まれる情報が複雑であると感じたら、迷わずスライドを分割し、できるだけ一枚がわかりやすいスライドが連続するようにしましょう。本やポスターのような固定された情報と違い、”時間”という次元を有効活用できることがプレゼンテーションの大きな強みです。



2.情報を絞り込む


さらに細かく見ていくと、今回のスライドでは載せなくてもよさそうな情報がいくつかあることがわかります。できるだけ情報を絞り込んでいきましょう。


まずはタイトルに注目すると「血球の推移」となっているので、尿ケトンの情報は別にするべきでしょう。このタイトルを残すのであれば情報は血球のデータのみにした方がよさそうですが、今回はタイトルを変更し、「治療経過」にしました。


また、入院していることはおそらくこのスライドより前に情報としてあり、さらに退院後はたいてい外来通院をするので、「入院」「外来通院」そしてそれをつなぐ矢印の情報もなくても伝わります。



さらに血小板のグラフ上に数値がすべてプロットされていますが、線グラフで見せたいものはひとつひとつの数値ではなく、大きな時間的変化です。数値を最初のデータ、最高値、最低値などに絞ることでかなり見た目がシンプルになります。



最後に今回グラフが2軸になっている原因として、白血球とヘモグロビンの情報を載せていますが、この2つはそもそもスライドに載せなくてもいいかもしれません。今回は例題のため残しましたが、自分がプレゼンターであれば削っていたと思います。

保有効果というものは厄介で、一度スライドに入れたものはなかなか手放せませんが、「最初からこれがなかった場合」をイメージし、ときには大胆に切り捨てることも大切です。


経過を表すグラフはとても難しく、私自身もまだまだ納得のいくデザインにたどり着けていません。例えば治療内容と検査データにわけるのでなく、治療期間をいくつかに分解して順に見せる方法もあるでしょう。


ぜひfacebookグループにアイデアやコメントをいただけると嬉しいです。このテーマは今後もバリエーションを考えていきます。



※スライドはすべてmicrosoft Powerpoint office 2019 Windows10 を使用しています

閲覧数:8,570回3件のコメント

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3 Comments


島津晶子
島津晶子
Jan 06, 2021

先生、コメントくれて、ありがとうございます。

 PTUは思ったんだけど、お薬ってさ、副作用とか出ても、患者は頑張って飲むやん?だから、私の感覚だと、薬のことを私自身、身近に大きく感じてて、もっと面積を大きく取るグラフのほうが、しっくりくる気がしたの。

 だけどPTUを大きくすると、血小板とかの線グラフに、ぶつかっちゃうもんね。

 じゃあPTUの色を、もっと派手にしたり、黒に近い紺にしたりすれば、色の主張を強くできて、強調されるかな?とも思うけど…。

 それだと、先生が、せっかく作ってくれたエレガントで完璧にカッコいいグラフの配色が崩れちゃうから、やっぱり駄目かもね(笑)。つわりの妊婦さんが、吐きそうになっても頑張って薬飲んでるんだから、そこが表現できたらなあ、と思ったんだけど、難しいね(^o^)。

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Kobayashi Kei
Kobayashi Kei
Jan 05, 2021

ありがとうございます。尿ケトンの値については棒グラフにするというのはひとつの手かもしれませんね。グラデーションで示すのも面白いアイデアと思います。PTUについてはスライドの高さの都合もありこのくらいがちょうどいいかなと思いました。

今年もよろしくお願いします。

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島津晶子
島津晶子
Jan 01, 2021

 あけまして、おめでとうございます。今年も、先生にとって、いい一年になりますように。


 スライドを分けて、前に表示した情報を消したり、薄くしたりして、情報量を調整するのは、とてもいいですね!。また、スライドの前後のプレゼン内容を考慮して、削減できる情報は、スライドから省くのも、とってもいいです。勉強になります。さすが、先生!スゴい!

 ちょっと気になるんだけど、尿ケトンも折れ線グラフで数量的に表したほうが、わかりやすい気がするんだけど、陽性陰性の+−って、やっぱ数値化するのは無理なの?数値化が無理なら、文字の背景色を、グラデーションにしたら、どうかな?+は濃いグレーで、だんだん薄くなって、−は白にするとか…。+が赤で、−を水色にして、グラデーションしていってもいいかも。その方が変化していっているのを表現できる気がします。

 あと、PTUは、もうちょっとグラフの背を高くしたほうが、「お薬出して治療を頑張ってます!」感が出る気がします。どうかなあ?


ではでは、先生、今年もよろしくね(^o^)。

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