• Kobayashi Kei

暗記系スライドのデザイン

プレゼンテーションは時間と共に流れていきます。記憶に留めたければ、自分で記録しなければいけません。しかし「このスライドをノートに取りたい!」と思った直後にスライドが進み、何の役にも立たないメモだけが残ったという経験、ありませんか?私はよくあります。覚えて帰ってもらいたい情報を覚えやすくするためのデザインを、考えてみましょう。


BEFORE

急性心筋梗塞のさまざまなTIPsを示したスライドです。イラストを使って大事なポイントを印象付けたり、大きな矢印で観る順番を示すなどおもしろい工夫がされていますが、いかんせん一枚に詰め込みすぎています。


直したい!

  1. 情報量が多く、字が細かすぎる

  2. 矢印の誘導はあるけれど、細かい情報が頭に入ってこない


AFTER





直した!

  1. それぞれの内容を個別のスライドにわけ、テキスト量を減らした

  2. S E Tの項目とその下位の項目の関連づけをより自然にとらえられるデザインにした


アニメーションをさせるとこんな感じです。


解説

1. 観客の視点で考える


デザインらしく、ユーザー視点でこのスライドを考えてみましょう。まず最初にプレゼンテーションの会場に座っている観客は何をし、何を期待しているのでしょうか?自分が観客である姿を想像すれば簡単ですが、プレゼンテーションを見て、聞いて、感じて、記録をして、そして内容を理解し、記憶して帰りたいと考えています。


誰もが貴重な時間と労力を割いて聞きに来ているので、有益な情報を少しでも多く記憶したいものです。逆の視点で考えると、プレゼンターは観客に少しでも多くの有益な情報を持って帰ってもらえるようプレゼンテーションをデザインする必要があります。


今回のスライドでは暗記方法がコンパクトに明記されており、「記録したい!」と「記憶したい!」が特に刺激されます。



ただし、このスライドをみて多くの人が「きっと書いてる間に次のスライドに進むんだろうな…」と瞬時に判断し、そっとペンを置くことでしょう。


自分がもし観客であれば、どのようなスライドを見たいか、どのように説明してもらえれば記録がしやすいかを考えなければいけません。




2.記録/記憶しやすいスライド作り


ではどうしたら記録/記憶しやすいスライドをデザインできるでしょうか?ポイントは、プレゼンターが観客に何を覚えて帰ってもらいたいかを明確にすることです。そして、覚えてもらいたいことを強調する、さらに繰り返し表示する、ができれば記憶してもらいたい意図は十分に伝わります。


今回のスライドはかなり情報量が多いですが、仮に覚えてもらいたい順番として


  1. S E T をきちんとみること

  2. N E R D, A M I C P R, A A A B C D E の頭文字暗記

  3. それぞれの頭文字が意味する内容

を覚えてもらいたいとしましょう。まずは S E T が大事であることを示します。

強調をするとき大切なことは、文字を大きくする、色をつける、だけでなく、他に余計なことを書かない(描かない)です。まずパッとS E Tの文字が目に入るようにし、それぞれの文字が上のラベルの色と対応するようデザインすることで、位置が離れていても関係性が伝わりやすくなります。口頭での説明もしっかりしましょう。


次に各内容を個別のスライドで解説します。

まず注目してもらいたいのは上のラベルです。前のS E Tで示したものをそのまま残し、ECGとTIMI scoreの項目を少し透明にすることで今はSymptomの話をしていることを提示しています。この後のスライドでもこのルールは保たれるのですが、スライドが進んでもS E T の内容は繰り返し表示できるようにしています。


そして下では N E R Dの文字とイラストのみを示しています。口頭で「Symptomには、 N E R Dが大切です」と伝えることで、観客はこの4文字をサッと書き留めることができます。右側に大きな余白があることも大切で、こうすることで右側に頭文字の説明がくるということを予測させられます。BEFOREからの転用ですが、イラストを添えることも重要で、視覚的な印象が強まりとても記憶に残りやすくなります。


さらに進めて

それぞれの頭文字が何を示しているかを説明します。ここで大事なのが、観客が書き留められるだけの情報量です。観客に記録してほしいのであれば、できるだけ文字数は減らし、簡潔な表現にしましょう。このスライドでは翻訳の漢字の画数が妙に多いので、案外日本語表記は全部削ってもいいのかもしれません。


他の項目も同じ要領で進めていきます。


先ほどのN E R Dより項目数も文字数も多いため、記録と記憶を促すのであれば、提示の仕方や話のスピードをゆっくりにする必要があります。ただこれだけの量を書き留めるのも大変であり、話す側もプレゼンに費やす時間がいたずらに消費されてしまうので、覚えてもらいたいことが多い場合は、覚えてもらいたいことをハンドアウトにして渡す方がベターです

ただスライド全部を印刷しただけのハンドアウトはあまり見返したいと思いませんが、プレゼンターが「これだけは覚えてほしい!」という思いのこもったハンドアウトは復習する価値がグッと高まります。


プレゼンテーションは体験です。体験の良し悪しは、主観的な価値で判断されます。良い知識が得られた、このプレゼンを聞いてよかったと思ってもらえる価値あるスライドデザインを目指しましょう。



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※スライドはすべてmicrosoft Excell office 365およびmicrosoft Powerpoint office 365 Window10 を使用しています